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東京地方裁判所 平成元年(ワ)780号 判決

原告 黒沢きぬ子

右訴訟代理人弁護士 南惟孝

同 茨木茂

被告 株式会社 コスモ・アイ

右代表者代表取締役 井上巧

〈ほか七名〉

被告株式会社コスモ・アイ、同井上巧、同大矢憲二、同松倉裕久、同島良二訴訟代理人弁護士 深澤信夫

被告株式会社日本通商振興協会、同藤嶋和郎訴訟代理人弁護士 浅井洋

被告秋山洋太郎訴訟代理人弁護士 足立邦夫

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金一七〇六万八一四六円及び内金一六〇六万八一四六円に対する昭和六二年一一月三日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、被告らの負担とする。

四  この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自金三一一四万五五九五円及びこれに対する昭和六二年一一月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告ら相互の関係

(一) 被告株式会社日本通商振興協会(以下、被告協会という)は、株式会社日本通商振興協会中央取引市場なるパラジウム取引を行う国内私設市場(以下、市場という)を開設している。

被告藤嶋和郎(以下、藤嶋という)は、本件の取引当時、被告協会の代表取締役であった。

(二) 被告株式会社コスモ・アイ(以下、被告会社という)は、市場に加盟しており、一般人からパラジウム取引の委託を受け、市場においてパラジウム取引を行うことを業務としている。

(三) 被告井上巧(以下、井上という)、同大矢憲二(以下、大矢という)、同松倉裕久(以下、松倉という)、同島良二(以下、島という)は、原告との取引当時、それぞれ被告会社の代表取締役、本部長、管理部長、営業部係長であった。

(四) 被告秋山洋太郎(以下、秋山という)は、原告との取引の当時、被告会社の最高権力者であって、会長と呼ばれ、同社の役員、従業員らを指揮、命令、監督していた。

2  本件取引

(一) 市場の実態

(1) 市場は、商品取引所法(以下、商取法という)等の法規に基づいて設立されたものではなく、その業務執行についても、何等法規制あるいは行政官庁等の監督を受けていない。

(2) 市場における取引契約は、履行期が先なだけの現物取引を装い、現物条件付保証取引なる名称を用いているが、実態は先物取引(決済日までに転売、買戻しを行い、差金の授受をもって決済し得る取引)にほかならない。先物取引という名称を用いると、顧客の不信をかうので、右名称を用いているのである。

被告らによる市場の開設とパラジウム取引は、市場における取引契約の実態が先物取引である以上、「先物取引をする商品市場に類似する施設を開設」することとそこでの「売買」を禁止している商取法八条一、二項の規定に違反する。

(3) 市場における価格の形成は、需要と供給のバランスのもとで正当に形成されたものではなく、海外市場の値動きを参考に人為的に適当な操作を行って決定されている。「客殺し」のため、積極的な価格操作も行われた。

(4) 市場には、パラジウム地金の需要に係わる業者は参加しておらず、社会的信用のない少数の会員が、取引の知識を欠く一般大衆から委託を受けて取引を行っているにすぎない。現実に市場においてパラジウム現物の交渉が行われたこともない。

(5) 被告会社を含む会員業者は、市場において売り買い同量の注文の手口を使っていた。売りと買いとが同量であれば、市場と業者との間で売買差損益金が生じることもなく、損失を出した客の委託保証金を市場を通じて利益を上げた客に引き渡す必要もなくなる。この方法は、保証金を確定的に業者の手中に納める手段である。かかる手口が常套とされているため、市場においては、客の損益を清算すべき清算組織が存在しない。

(6) 被告会社は、市場において一部呑行為を行っている。

(7) かように市場は商取法に違反し、かつ取引形態も著しく公正を欠き、いかさま賭博と同様のものであって、経済的に何等有用な取引を行っていない。これらを全体としてみれば、市場は、本来パラジウム地金の現実の取引を行うことを目的として設立されたものではなく、パラジウムの相場の外観を利用して経済的に無知な一般大衆から金員を詐取することを目的として設立されたものであることが明らかである。

(二) 原告と被告会社間の取引の経緯

(1) 原告は、被告会社の社員によるパラジウム取引の無差別電話勧誘の対象とされ、その後、島により自宅訪問の上勧誘を受けた。島は原告に対し、昭和五九年一一月二七日、「パラジウムは需要が多く、今の時期は値上りして絶対儲かる。値下がりしても、元金を割ることは絶対ない。」と、言葉巧みに勧誘した。この際、取引の実質は先物取引であり、極めて危険性が高いのにもかかわらず、島は、原告に対し、かかる取引の仕組、その危険性について全く説明せず、単に儲かることのみを強調した。原告は、右取引の仕組を理解しないまま、島の言葉を信じて、被告会社との間でパラジウムの「現物条件付保証取引」なる取引の委託契約(以下、委託契約という)を一〇キログラム分(保証金一〇〇万円)締結した。

(2) 原告は、島に対し、同年一一月二九日頃、右契約に伴い被告会社に預託する保証金代用有価証券として、日立金属株一〇〇〇株、サンデン株一〇〇〇株の各株券を交付した(島は原告に対し、保証金を株券で代用できると説明しており、株券を時価の七割として保証金に換算して引き取った。)。

(3) 同日、島は、被告に対し、「以前に買ってあってすぐ売っても数十万円儲かるパラジウムが二〇〇万円分あるので譲る。」などと言葉巧みにパラジウムの買い足しを勧誘し、原告はこれを信じて二〇キログラムの委託契約(保証金二〇〇万円)を締結し、同年一二月一日頃、保証金代用有価証券として、日立金属株二〇〇〇株及びソニー株三〇〇株を交付した。

(4) 原告は、その後同年一二月六日及び七日に、被告会社から、右差し入れた日立金属株合計三〇〇〇株及びソニー株三〇〇株の返還を受け、代わりに被告会社に対し、大日本印刷株一〇〇〇株及び現金二〇〇万円を差し入れた。

(5) 大矢は、原告に対し、同年一二月一〇日頃、「値下がりしたので、両建てをする必要がある。両建てしないと元金がなくなる。保証金の半分はこちらで持つ。」旨もちかけ、原告は、これに驚きあわてて、言われるままに三〇キログラムの追加委託契約を締結し、同年一二月四日、その保証金の半分として一五〇万円を現金で被告会社に支払った。

(6) 松倉は、原告に対し、昭和六〇年一月一〇日、電話で「下げ止まったので決済して利益を出す。その金を追加分の保証金に回す。」旨述べ、原告は意味の分からないまま、よろしく頼む旨お願いした。

(7) 大矢は、原告に対し、同年二月二二日頃「外国との関係で大幅に下げたもので、六〇キログラム両建てしたほうがいい。さもないと元金がなくなる。保証金の半分は会社で持つ。」旨もちかけ、原告は、元金がなくなっては大変だと思い、言われるまま六〇キログラムの追加委託契約を締結し、その保証金として、被告に対し、同年二月二五日、コピア株一〇〇〇株、ソニー株三〇〇株及び現金三〇万円を交付した。

(8) 原告は、被告会社社員から、同年二月二七日「損が大きいので、三〇キログラム売りをやった方がいい。」旨もちかけられ、これを信じて三〇キログラムの追加委託契約を締結し、被告会社に対し、同年三月一日、保証金として京樽株一〇〇〇株、日本電気株一〇〇〇株、大隈鉄工株一〇〇〇株及び現金四〇万円を交付した。

(9) 松倉は、原告に対し、同年三月一三日「あまりに損が大きいので可哀そうだから、すぐ売って儲かるパラジウム五〇〇万円分を譲る。二週間後には必ず引き出せる。」旨申し出た。原告は、これを信じて承諾した。被告会社は、同月一五日、原告から受け取っていた京樽株一〇〇〇株、大隈鉄工株一〇〇〇株及び日本電気株一〇〇〇株を、当時の時価金三五八万五七二〇円で売却して、その保証金の一部に充当した。また、原告は、被告会社に対し、同日、右保証金の一部として一二〇万円を支払い、さらに不足保証金として、要求されるままに、三月一六日に二四一万九七六四円を、三月二〇日に三三万円を支払った。

しかし、原告が右約束の五〇〇万円の支払を請求しても、松倉及び大矢は、言を左右にしてこれに応じず、結局五〇〇万円は交付されなかった。

(10) 大矢は、原告に対し、同年三月二二日頃「保証金が足りなくなった。急に変動し最後には戻るが、今は保証金不足となっているので、差し入れている株券を売って現金を入れる必要がある。」旨申し入れた。原告は、大矢の言うところを信じて、被告会社に差し入れている株券全部を換金することに同意した。その結果、被告会社は、三月二三日、サンデン株一〇〇〇株、大日本印刷株一〇〇〇株、コピア株一〇〇〇株及びソニー株三〇〇株を、当時の時価合計三九三万八八二三円で売却し、保証金に振り替えた。

(11) 大矢は、原告に対し、同年五月二四日「八月限が、利が乗ってすごい儲けになる。だから、八月限の売り五〇キログラムを追加しないか。今の値段では今でなければできない。今がチャンスだ。」と誘ったので、原告はこれを信じ、被告会社に対し、五月三〇日、その時点までの保証金として一八〇万円を、六月一〇日に日本重化学株一万八〇〇〇株を、それぞれ交付した。

(12) 大矢は、原告に対し、同年六月一二日「また利益が出た。こんなに儲かるからもっとやらないか。半月だけ置けばよいから。」と申し向け、しつこく勧誘したので、原告は、半月でそんなに儲かるならと誤信して追加委託契約を締結し、被告会社に対し、六月一九日に保証金二五〇万円を支払った。

(13) 被告会社は、同年七月二三日、原告から受領していた日本重化学工業株のうち一万三〇〇〇株を売却して日本シイエムケー株一〇〇〇株に差し替え、売却剰余金五万八八一一円は現金として保証金に振り替えた。

(14) 原告は、大矢に対し、同年六月末頃から八月上旬にかけて、再三再四決済を要求したが、大矢は言を左右にしてこれに応じようとしなかった。大矢は、八月五日、原告の強い申し出により、当時の原告の建玉四八八キログラム中端数の八八キログラムについて決済を承諾した。ところが、松倉が被告に対し、八月六日「外電によると下がって五〇〇円割れ確実だ。今決済したらもったいない。」等と言って、決済を撤回させた。

(15) 大矢は、原告に対し、同年八月八日頃「値上りしてしまったから両建した方がよい。今上がっているが、月末には必ず下がるから心配ない。両建てして上がったときに一方をはずし、下がったときにもう一方をはずせばかえって儲かる。」等と勧誘し、更に井上は、八月一二日「市場に知合いがおり、両建ての資金を待ってもらっている。資金はほとんど会社と社長個人で出すが、あなたが五〇〇万円だけは出さないと、また株券も売らないと、元金が全部なくなる。元金は、既に買ってありすぐ売って儲かるのをあなたにまわすなどして四〇万円位の利子をつけて今年一杯に返す。五〇〇万円の方も八月末には必ず返す。」等と巧みに勧誘、威迫した。その結果、被告会社は、誤信、畏怖した原告の同意を取り付けて、被告会社が原告から受領していた日本重化学株五〇〇〇株、ソニー株三〇〇〇株、日本シーエムケー株一〇〇〇株を換金して、その代金七二九万〇九六八円を保証金に振り替え、さらに原告から八月一五日に、保証金として現金五〇〇万円の支払いを受けた。

(16) 井上は、原告に対し、同年八月二九日頃「徳島に今両建ての資金を借りに来ているが、二〇〇万円だけ足りない。月末までに入れてくれれば両建てが成立し、その後次の取引が可能となり、一五〇〇万円の利益が出るようにしてある。明日までに二〇〇万円入れてくれたら、九月五日に七〇〇万(八月末までに返すと言っていた五〇〇万円と二〇〇万円の合計額)と三〇〇万円(井上は、一五〇〇万円の利益が出ても、両建ての資金のほとんどを会社と井上個人で立替えているので、この内原告にまわすのは三〇〇万円であるといっていた)合計一〇〇〇万円を必ず返す。」などと虚言を弄し、この旨信じた原告をして、被告会社に対し、八月三〇日に二〇〇万円を保証金として支払わせた。

3  被告らの共同不法行為

(一) 被告会社

以上のとおり、被告会社は、商取法八条に違反し、かつその取引形態においても違法性の高い市場に加盟して、外観上有効なパラジウム取引を行っているかのように装い、経済的に無知な原告に対し、社員をして、本件の取引が先物取引であることや、市場における取引の性格、危険性について全く説明させずに、パラジウム取引に加われば必ず多大な利益が生じ、これが安全、確実、有利な取引であるかのように錯覚させる違法な勧誘を行わせ、その旨原告に誤信せしめ、もって右取引の委託契約を締結させた。そして、原告がいったん取引に応じると、損益を埋めるため又は利益を拡大するためと詐言、脅迫を弄して取引の規模を拡大させて、原告に多額の保証金を出捐させ、最終的には価格操作等によって原告に損失を出し、もって、保証金名下に金員を騙取した。

被告会社は、組織的に右不法行為を実行したものであって、民法七〇九条による不法行為責任を負う。

(二) 井上、大矢、松倉及び島

島は、被告会社の右違法な勧誘行為に直接従事し、他の三名は、自ら直接に、又は他の被告や被告会社従業員を指揮監督して右違法な勧誘行為をさせ、もって、かかる不法行為を被告会社と共謀の上行った者であるから、それぞれ民法七〇九条、七一九条の共同不法行為責任を負う。

(三) 秋山

秋山は、被告会社の会長として被告会社の営業方針を定め、かつ井上、大矢、松倉、島の業務を指揮、監督、命令していた者として、被告会社、井上、大矢、松倉及び島と共謀の上、組織的な前記不法行為を行ったのであるから、民法七〇九条、七一九条の共同不法行為責任を負う。

(四) 被告協会及び藤嶋

被告協会は、被告会社を含む加盟業者が、一般大衆から金員を詐取するための手段として市場を開設、運営し、被告会社による前記勧誘と金員の騙取を放置したまま、同社からその利益の分配にあずかっており、また、被告藤嶋も、その代表取締役として、かかる被告協会の業務を指揮、監督、命令していた者であって、いずれも他の被告らと共謀の上、組織的な前記不法行為を行ったのであるから、民法七〇九条、七一九条の共同不法行為責任を負う。

4  損害

原告は、被告らの右共同不法行為によって、以下の損害を被った。

(一) 別表のとおり、原告が被告会社に対して、保証金名目下に支払った現金と取引保証金代用有価証券として交付した株券を被告会社が売却して保証金に組み入れた金員との合計額から、一部の返済額を控除した残額三三〇〇万〇三五二円。

(二) 慰謝料三〇〇万円

原告は、被告らの共同不法行為によって、夫の残した財産及び自己が長年にわたって貯えてきた財産をわずか一〇箇月のうちに騙取された。原告は、未成年の子供を二人かかえており、生活の糧を得るために、病弱の体をおして一般事務の仕事をせざるを得なくなってしまった。右精神的苦痛を金銭に換算すれば、三〇〇万円を下らない。

(三) 弁護士費用四〇〇万円

原告は原告代理人との間で、弁護士費用につき日本弁護士連合会弁護士報酬規定による旨を約し、これによると原告代理人に支払わなければならない着手金及び報酬の合計は四〇〇万円を下らない。

5  結論

よって、原告は、被告らに対し、前記共同不法行為に基づく損害賠償請求権として、金三一一四万五五九五円(上記損害額合計四〇〇〇万〇三五二円から、訴外松下實より和解金として昭和六二年一一月二日に支払いを受けた金一三二〇万円、ただし不法行為後である昭和六〇年九月一日から昭和六二年一一月二日まで年五分の割合による遅延損害金四三四万五二四三円と元金八八五万四七五七円とに充当、を控除した残額)及びこれに対する右充当の後である昭和六二年一一月三日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払え。

二  請求原因に対する被告協会及び藤嶋の認否

1  請求原因1の事実のうち、(一)及び(二)は認め、(三)は不知。

2(一)  請求原因2の(一)の事実のうち、(1)は認める。

(二) 同(2)は否認する。

現物条件付保証取引とは、現物の受渡しに期日を定め、受渡期日に売方は現物を、買方は代金を授受して決済するいわゆる延べ取引である。受渡期日までに転売又は買戻しをして売買関係から離脱し、差金のみを授受することは許されないのであって、この点で先物取引とは異なる。

また、仮に市場における取引が先物取引であるとしても、以下のとおり商取法八条に違反するものではない。

すなわち、同条の一項は、「先物取引をする商品市場に類似する施設を開設」することを禁じているが、ここにいう商品市場とは、同法二条二項によれば、政令指定商品について商取法の規定によって開設される市場(以下、公市場という)をいう。パラジウムについては、かかる公市場が開設されていない以上、市場も、「先物取引をする商品市場に類似する施設」には該当しないことになる。

かかる文理解釈は、商取法八条の立法趣旨にも合致する。なぜなら、商取法八条は、公市場に当該物品についての多数の取引を集中させ、公正な価格形成を図るため、また、商品の同滑な流通を図るため、公市場の独占性を確保する趣旨で立法されたものであり、従って、公市場のない物品について、私設市場を禁ずる理由はない。

以上の解釈は、昭和五五年に発表された、内閣法制局の公式見解とも一致するところである。

(三) 同(3)は否認する。

市場は、当日午前一〇時の国際相場を標準とする市場気配値を標準価格として発表し、会員のセリ売買によって取引を行い、売買数量が一致した値段を成立値段とする。売買数量が一致しない場合は抽選で売買を成立させることもある。

また、暴騰暴落による混乱防止のため値幅制限を行い、基準価格により一・五パーセントないし三パーセントの幅の範囲内か、前日の引き値より一〇パーセント以内と定めている。

従って、暴騰暴落による値開きはないし、かつ海外市場の価格と極端な差はなく、概ね海外市場と比べ公正な価格形成が行われている。

(四) 同(4)は否認する。

(五) 同(5)のうち、市場と加盟業者の間で、売り買い同数の取引が多かったことは認める。しかし、これが客より委託された保証金を業者の手中に留めるためのからくりであるとの点は争う。

(六) 同(6)及び(7)は否認する。

3  請求原因2の(二)の各事実は不知。

4  請求原因3の(一)ないし(四)の各事実は否認する。

また、仮に被告会社が原告との間で違法な取引を行い、これによって原告が損害を被ったとしても、これは、被告協会および藤嶋が正当に運営していた市場を、被告会社が被告協会らの知らぬ間に不正に利用していたものであって、被告協会らは、これに対する故意、過失及び因果関係を欠くから、原告に対して不法行為責任を負うべき理由はない。

5  請求原因4の各事実のうち、(一)の計算関係は認める。その余は否認する。

三  請求原因に対する被告会社、井上、大矢、松倉及び島の認否

1  請求原因1の事実のうち、(一)ないし(三)は認める。

2  請求原因2の(一)の各事実に対する認否は被告協会らの認否と同じ。

3  請求原因2の(二)の事実のうち、(1)ないし(15)については、原告と被告会社間の委託契約の締結、保証金の交付、保証金代用有価証券としての株券の交付、株券の売却とその代金の保証金への組入れの経緯は、いずれも認める。井上、大矢、松倉及び島の、原告に対する勧誘の言動は否認する。被告会社は、原告に対し、パンフレット等で取引の仕組、その危険性についても十分説明しており、その上で原告から委託を受けたものであり、原告は、その後、自らの判断に基づいて取引を行ってきたものである。

(16)は不知。

4  請求原因3の(一)ないし(四)の各事実は否認する。

5  請求原因4の(一)の事実のうち、計算関係は認める。しかし、これが被告会社らの不法行為によって生じた損害であるとの点は否認する。原告は、本件取引の正当な保証金として金員を出捐し、順調に利益を上げていたが、昭和六〇年七月二日、金七五〇円で売付けたパラジウム四八八キログラムが、値上がりしたため、金五七五八万四〇〇〇円の損害を被るなどして、それまでの利益を失い、保証金の返還も受け得なくなってしまったものである。

6  請求原因4の(二)及び(三)の事実は否認する。

四  請求原因に対する秋山の認否

1  請求原因1の事実のうち、(一)及び(二)は不知。同(三)の内、井上が被告の代表取締役であったことは認め、その余は不知。同(四)は否認する。

井上は、秋山のことを勝手に会長と呼んでいたことはあるが、これは、被告会社の会長という意味ではない。秋山は、被告会社に金員を貸し付けるなどした債権者の一人にすぎず、同社から報酬はもちろん、何らの金員も受領しておらず、同社の経営に関与したこともない。

2  請求原因2ないし4の各事実はすべて不知。

第三証拠《省略》

理由

第一被告会社、井上、大矢、松倉及び島の責任

一  請求原因1(被告ら相互の関係)の(一)ないし(三)の事実については、すべて当事者間に争いがない。

二  請求原因2(本件取引)の(一)(市場の実態)について

1  同(1)の事実は、当事者間に争いがない。

2  同(2)について判断する。

(一) まず、本件の現物条件付保証取引の実質が、先物取引であると言い得るかどうかを検討する。

被告協会らは、現物条件付保証取引は、決済期までに転売によって売買契約関係から離脱できない点において、先物取引と異なるというのであるが、確かに、《証拠省略》の現物条件付保証取引約款第2条によれば、受渡期日前に転売又は買戻をして差金決済することを禁じている。しかし、同条2項によると、受渡期日までに買い注文に対して売り注文、売り注文に対して買い注文をして、期日に相殺計算して決済することができることが認められる。これは、法的構成は異なっても、経済的意義からすれば先物取引における差金決済と同様の効果を上げることが許されているということであり、かつ、《証拠省略》により認められる本件取引の経過にも徴すると、本件の現物条件付保証取引の実態は、投機性の強い実質的な先物取引であると認められる。

(二) 現物条件付保証取引の違法性

商取法は、九二条ないし九四条等に委託者保護の規定があることからみて、指定商品についての公市場に関しては、委託者保護をその主たる目的の一つにしていることは明らかである。かかる委託者保護の必要性は、先物取引の場合その射倖的契約構造から過当な投機や不健全な取引を誘発する虞れが高く、取引の仕組や相場に十分な知識を持たない大衆がこれに巻込まれて不測の損害を被る危険があるため、重要なものといえる。そして、この危険は、法や行政官庁による規制が何等及ばない私設市場においては、公市場におけるより遥かに高いものとなるのは明らかである。

それにもかかわらず、商取法がパラジウムが指定商品外であることのみによって、広く私設の先物取引市場を肯認していると解釈するのは、不合理である。次項以下で認定する市場の実態に照らすと、本件の現物条件付保証取引は、商取法八条の趣旨に照らし、公序良俗に違反するものと言わざるを得ない。

3  同(3)について判断する。

《証拠省略》を総合すれば、ニューヨーク市場の価格変動と市場における価格変動にはズレが存すること、ストップ高についての幅が必ずしも守られていないこと、被告らにおいてストップ高の幅が明確になっていないこと、価格のついていない時が散見されること、加盟業者が当時一五社しかおらず、かつ毎日の取引に一五社が参加しているわけではなく、少数の業者間で売買取引がされており、一社によって値段の形成されている日も少なからずあること、全体として取引数量が極めて少ないこと、我が国において実際にパラジウム地金の大量の需要を有しているような業者は加盟していないこと、市場におけるセリが、電話を使って密室において行われており、公開性が極めて低いこと、セリにおいて媒介付出し、すなわち値が決まってから売買同数にするための反対注文をすることができることが認められる。

被告藤嶋本人の供述には、結果として一社の売買のみが成立している日でも、価格の形成においては多くの業者間のセリが行われており、会員のため公正な市場を開設している旨の部分があるが、裏付けを欠く、不自然な弁明であって採用できない。

以上の点に徴すると、市場における価格形成システムは、公正なセリの結果形成される保証がなく、被告協会と、少数の加盟業者間により恣意的に決定される危険が極めて高いものであったと推認せざるを得ず、市場は公正なものとは到底いえない。しかし、それ以上に、市場における価格が、客に故意に損失を与える目的で操作されていたこと、すなわちいわゆる「客殺し」が行われていたとまで、認めるに足りる的確な証拠はない。

4  同(4)について判断する。

《証拠省略》を総合すれば、市場に加盟していた業者が極めて少数であり、資本金一〇〇〇万円程度、社員一五人程度の比較的小規模の業者であったこと、その中に社会的信用に問題のある業者が含まれていたことが認められる。しかし、市場に加盟していた業者のすべてが、社会的信用に問題を有する業者であると認めるに足りる証拠はない。

また被告協会が、パラジウム地金の実際の受渡しをしたことがあるか否かの点については、被告会社及び被告協会が原告の求めにもかかわらず何等的確な証拠を提出していないことに徴すれば、市場においては、パラジウムの現物取引はほとんど行われていなかったと推認せざるを得ず、被告藤嶋本人の供述のうち、これに反する部分は採用することができない。

5  同(5)について判断する。

《証拠省略》を総合すれば、被告会社が、市場において、委託者に勧めることにより又は自社玉を建てることにより、業者として売買同量の注文を行うことが多かったこと、及び他の加盟業者もこのような売買同量の注文を頻繁に行っていたことが認められる。

次にかかる注文の方式を採っていた目的であるが、《証拠省略》を総合すれば、売買同量の注文によれば、売買差損益金が生じないので、被告会社が委託保証金を市場に提出せずに、確定的に自社内に留めることができること、被告会社が客からの保証金を別保管せず、会社の経費の口座に一緒に振り込み、会社の経費として使っていたこと、当時、被告会社の経営状態が極めて悪化していたことが認められる。

以上の事実に徴すれば、被告会社が、保証金を自社内に留めるために売買同量の方式で注文をしていたことが推認され、市場の他の加盟業者において売買同量の注意が多い点も含めて、市場の不公正さの証左といえる。

6  同(6)について判断する。

《証拠省略》によれば、被告会社が二重の帳簿を作成していたこと、それぞれに食違いの存すること、被告の主張する取引で市場取引確認・証明書に記載のないものがあることが、認められる。しかし、これのみから被告会社が呑行為をしていたと認めることはできず、他にこれを認定するに足る的確な証拠はない。

7  同(7)について

以上の事実及び先に触れた私設市場における実質的な先物取引の危険性に徴すると、被告会社はパラジウムの市場を開設、運営するのであれば、少なくとも、加盟業者に適格者を厳選し、殊に現実に大きな需要を有する業者を加え、現物取引をしない不安定かつ危険な業者を排除し、業者数と取引量において相当の規模を達成し、公正かつ実質的なセリを行い、もって、国際価格と比べても適正な価格の市場とすべき注意義務があるというべきである。ところが、被告協会は、これを故意に怠り、不公正かつ違法な市場を開設、運営したものであり、市場での取引は、投機性が高く、多額の損失を生じさせる虞もある不確実なものであり、一般大衆にとっては極めて危険性の高いものと言うべきである。

なお、右以上に、市場における取引がいかさま賭博と同様であって、市場が大衆から金員を詐取することのみを目的として設立、運営されていたとまで認めるに足りる的確な証拠はない。

三  請求原因2(本件取引)の(二)(原告と被告会社の取引の経緯)について

1  (1)ないし(16)の事実のうち、原告と被告会社間で、市場におけるパラジウム取引委託契約の締結が行われ、原告主張の頃に主張の金額の保証金の交付、保証金代用有価証券としての株券の交付、株券の売却とその代金の保証金への組入れ等がなされたことが弁論の全趣旨により認められる。

2  次に、かかる取引がなされるにあたって、大矢、井上、松倉及び島に違法な勧誘行為があったか否かを判断する。

《証拠省略》を総合すれば、被告会社は無差別の電話連絡を行った上、営業担当社員を派遣して、しつこい勧誘を行っており、原告もこのような方法での勧誘を受けた一人であること、原告は、結婚前に金融機関に勤めた経験があり、また、株式の投資も行ってはいたが、当時は、夫を病気によって失ったばかりの無職の家庭の主婦であって、商品相場及び先物取引についての十分な知識を有しておらず、かつ、そのことを被告会社も知っていたこと、最初の勧誘員であった島は、取引開始にあたって、取引の仕組、危険性及び勧誘に対する警戒の必要についても一応触れられているパンフレット、約款を渡していること、しかし、取引の仕組や実態、すなわち、実質的には私設市場における先物取引であって、短期間に巨額の損が出る危険のあることについては、説明をせず、渡すはずであったという危険開示文書の交付もなく、逆に、「絶対儲かる。危険なことは何もありません。」と強調したこと、株券を会社が預かるだけで取引ができるような説明をして株券を預かっておいて、後で保証金が足りないといっては売却してしまったこと、井上、大矢、松倉及び島は、取引の拡大や両建てをするに際して、値動きの数値や両建ての仕組など、何等具体的な説明をせず、相場の動向を判断する資料も与えないまま、「今までの金が全部なくなってもいいのか。」とか「大きな利益を得るチャンス。」とか、「二週間位預ければ元のお金も戻る。」とか「今すぐお金を出せば既に儲かっているものを譲ってあげる。」などと、これをする以外選択の余地がないかのように説明して、原告に熟慮する機会を与えずに、次々といわば白紙委任的な承諾を取っていったこと、その際、一旦保証金等の出捐をしても、少し待てば必ず利益がついて戻ってくるかのように強調し、実際には、大きな危険性があることについて全く説明していないこと、原告からの再三の決済要求を拒否していたことが認められる。《証拠判断省略》

以上を総合すると、市場における取引の高度の危険性は既に判示したとおりであるから、被告会社が一般の顧客に勧誘を行うに当たっては、取引の仕組と実態を十分説明し、その投機的危険性と市場の価格の不明朗さ等も告げるべき信義則上の義務を負っているものというべきである。しかるに、右に述べたとおり、本件の取引については、原告の正常な判断を阻害する脅迫的な言動があったということまではできないけれども、井上、大矢、松倉及び島は、市場における取引の高度の危険性を故意に隠蔽し、安全かつ極めて有利な取引であるかのように装って、商品取引の専門家ないし十分な経験を有するものではない原告を取引に引き込み、一旦委託契約を結んでからは、更に利益が出るとか、大きな損を生じるとか言って、判断資料も与えないまま取引を拡大させ、結局、原告の無思慮と利益を得たいという心理を巧みに操って、被告会社の思うとおりの取引をさせたことが認められる。

そうすると、このような勧誘行為及びそれによる委託契約の締結と各取引の承諾は、右四名の違法な詐欺的行為による原告の誤信に基づくものというべきである。

四  請求原因3(被告らの共同不法行為)の(一)(被告会社)及び(二)(井上、大矢、松倉及び島)について

以上認定した市場の不公正さ及び危険性、原告との取引の経過並びに被告会社が、両建てにより委託者と利益相反する立場に立ち得、しかも、原告からの決済要求を拒みつつ保証金を会社の経費に使ってしまっていたことに照らすと、井上外三名の行為は、単に個々の取引に関与した一部の従業員の行為というに止まらず、被告会社の営業方針に基づき、組織的に、原告に対し、その取引の実態を故意に隠蔽し、原告の無思慮と利益を得たいという心理を利用して、取引に引き込み、これを拡大させたものであって、最終的には原告に損を生ぜしめ、保証金を確定的に自己の手中に収める意図の下になされたことが推認される。

従って、かかる詐欺行為は、被告会社の組織ぐるみの違法行為というほかはなく、被告会社、井上、大矢、松倉及び島は、取引の一部にしか直接関与していないとしても、全体について不法行為責任を負い、これらは共同不法行為を構成するものというべきである。

五  請求原因4(損害)について

1  請求原因4の(一)の計算関係は当事者間に争いがなく、既に認定した事実に照らせば、この三三〇〇万〇三五二円が原告の被った損害額となる。

2  請求原因4の(二)の慰謝料については、《証拠省略》によれば、原告が、被告会社らの不法行為により精神的損害を被ったことは否定し得ないところであるが、かかる精神的苦痛は、経済的な取引により利益を得ようとして、結局失敗した以上、ある意味においてやむをえず、原告としても覚悟すべき範囲を越えない。よって、被告らに右原告の精神的苦痛を慰謝する為の慰謝料の支払いを命じるのは相当でない。

3  既に認定した事実や、《証拠省略》によれば、原告は、当時四九歳であって、通常の社会生活につき、一般人なみの理解力と判断力を備えており、当初の約款の表現等から、あるいは取引拡大中の被告会社従業員の言動等から取引の危険性に気付いて、これを中止することもできないわけではなかったと考えられる。従って、この意味において、前記損害を被る上で原告側にも過失があったことは否定できず、本件に現れた諸般の事情を勘案すると、過失相殺の割合を二割として、前記損害額から二割を減じた二六四〇万〇二八一円が原告の請求し得る損害額とするのが相当である。

4  請求原因4の(三)の弁護士費用については、原告が本件訴訟を弁護士に委任し、これに相当の報酬を支払うことを約していることは弁論の全趣旨上明らかであるから、認容額、本件訴訟に至る経緯、本件訴訟の難易等本件に顕れた諸事情を考慮すると一〇〇万円について、本件不法行為と相当因果関係のある損害として認めるのが相当である。

第二被告協会及び藤嶋の責任について

一  請求原因1(被告ら相互間の関係)の(一)及び(二)の事実については、当事者間に争いがない。

《証拠省略》によれば、同(三)の事実も認められる。

二  請求原因2(本件取引)の(一)(市場の実態)については、(1)の事実は当事者間に争いがなく、その余は既に第一の二で認定、判断したとおりである。

三  請求原因2(本件取引)の(二)(原告と被告会社間の取引の経緯)について

1  《証拠省略》によれば、(1)より(16)の事実のうち、原告と被告会社間で、市場におけるパラジウム取引委託契約の締結が行われ、原告主張の頃に原告主張の金額の保証金の交付、保証金代用有価証券としての株券の交付、株券の売却とその代金の保証金への組入れ等がなされたことが認められる。

2  その余の点については、既に前記第一の三、2で認定、判断したとおりである。

四  請求原因3(被告らの共同不法行為)の(四)(被告協会及び藤嶋)について

以上によれば、被告協会は、積極的に加盟業者が大衆から金員を詐取する手段を提供することを目的として市場を開設していたとまで認めるに足りる的確な証拠はないにしても、少なくとも、加盟業者が市場の危険性を十分に知らない一般大衆に害を及ぼす可能性が極めて高いことを認識しつつ、敢えて、不公正かつ違法な市場の開設及び運営を行い、そこに加盟していた被告会社らが、原告に対し、保証金を奪う意図のもとに不法な取引を行うのを放置したことが認められる。

また、既に認定した事実に、《証拠省略》を合わせ考えれば、藤嶋も、市場における価格の形成が公正でなく、委託者の危険性が極めて高いことを十分知り得るところであったのに、被告協会の代表取締役として、右不公正かつ違法な市場を開設、運営し被告会社らの不法な取引を放置していたものと認められる。

そうすると、被告協会と藤嶋の右行為は、不法行為を構成し、第二の五で認定した損害と相当因果関係を有するというべきである。そして、以上の経緯からすると、被告協会及び藤嶋は、被告会社らと共同して、原告に対し、右不法行為責任を負うと解するのが相当である。

第三被告秋山の責任

一  請求原因1(被告ら相互の関係)については、(三)の事実のうち、井上が被告会社の代表取締役であったことは、当事者間に争いがない。

同(一)及び(二)の事実並びに(三)のその余の事実については、第二の一における認定事実と《証拠省略》によれば、これを認めることができる。

二  請求原因1の(四)については、《証拠省略》によれば、秋山が、最高権力者であったかどうかは不明であるが、会長と呼ばれ、経営陣の一員であって被告会社の営業を指揮監督できる地位にあったことが認められる。

《証拠判断省略》

三  請求原因2(本件取引)の(一)(市場の実態)、(二)(原告と被告会社間の取引の経緯)、の事実は、前記第一及び第二における認定判断に照らせば、これと同様に認定される。

四  請求原因3(被告らの共同不法行為)(三)(秋山)について

以上の事実に照らすと、前記第一で認定した原告に対する不法行為は、被告会社の中心的業務としてなされたものであり、秋山は、被告会社の業務を指揮監督できる地位にいたのであるから、組織ぐるみの右不法行為を共謀していたものと認めるべきである。従って、秋山は、他の被告らと共に原告に対し共同不法行為責任を負い、前記第一で認定したとおりの損害賠償責任を負うべきものと認められる。

第四結論

以上によれば、原告の請求は、金二七四〇万〇二八一円及び内金二六四〇万〇二八一円に対する昭和六〇年九月一日から年五分の割合による遅延損害金から、原告の自認する昭和六二年一一月二日支払いの金一三二〇万円(遅延損害金に二八六万七八六五円を、元本に金一〇三三万二一三五円を充当)を控除した金一七〇六万八一四六円及び内金一六〇六万八一四六円に対する昭和六二年一一月三日から民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各自支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、原告のその余の請求は失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条但書、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 菅野博之)

〈以下省略〉

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